優れた土の基本条件

鉢植えでは土の量が限られており、根を張れる範囲も限られているため、地植え以上に良い土作りを心がける必要があります。ここでは土作りをする上で重要な3つのポイントである①物理性②化学性③生物性を紹介いたします。なお、主に吉田流プランター菜園というサイトと、いちばんよくわかる土と肥料入門 (加藤哲郎)という書籍を参考にしています。どちらも非常にわかりやすい説明されています。

① 土の物理性

物理性とは保水性排水性通気性などを指します。良い土はこれらの特徴が優れており、ふかふかしています。保水性は水を保つ性質、排水性は水を流す性質です。一見両立しないように思えますが、乾燥時には水を保持し、湿潤時には余分な水は流すのが排水性と保水性を両立した良い土なのです。こうした土は下の図のように重層的な団粒構造になっています。

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土の団粒構造
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団粒構造のある土
団粒と団粒の間には隙間が大きいので余分な水を流したり(排水性)酸素を通したり(通気性)することが可能であり、一つ一つの団粒の中には水が蓄えられます。それによって根に必要不可欠な酸素を送ることができ、根腐れを防ぐことができます。保水性に関してもひょうたんのように乾燥に弱い植物には重要になってきます。

団粒を作る糊の役割をするのが堆肥や有機肥料が微生物によって分解されてできる腐食です。したがって腐葉土などの堆肥を入れることが重要になってきます。

細かい土の粒子(微塵)は排水性を悪くする原因になります。微塵が多いと泥みたいにべちゃべちゃな土になります。新しい土の場合、微塵はそこまで多くないですが、古い土は微塵が多いのでできるだけ土ふるいなどを使って取り除くことが大切です。

土以外にも鉢の底のスリット(穴)や、鉢の底に入れる鉢底石も排水性や通気性を確保するのに役立ちます。鉢底石は30 cmくらいの鉢で5 cmほどいれる必要があります。またウォータースペース(鉢の上の縁から土の表面までの領域。水やりをするとこの領域に水がたまり、水が溢れてしまうことを防ぐ)を3-5 cm以上にしないようにし、土が乾きにくくならないようにします。畑の畝のように植物が植わってる中央部分だけ盛り上げるのも乾燥に効果的です。

② 土の化学性

化学性は肥料成分などのpH保肥性(肥料成分を蓄える性質)などを指します。窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウの三大栄養素に加え、鉄、銅、マンガンなどの微量栄養素も必要になってきます。その一方で過剰な栄養素も様々な害を引き起こしてしまいます。過剰だとそもそも浸透圧の影響で塩をかけられたナメクジのように水が出ていってしまいます。そのため、肥料の成分をみて肥料を施す量をよく検討する必要があります。

pHに関しても適正な値にすることが重要です。一般に日本の土壌は酸性であり、多く植物は強い酸性土壌を嫌うので石灰を加える必要があります。ちなみにひょうたんの適正pHは6-6.5(弱酸性)です。鉢やプランターで使う培養土はそこまで酸性になっていないので加える石灰量は少量で十分です。pHの確認は市販の測定計や酸度測定液で可能です。おすすめは住友化学園芸の酸度測定アースチェック液です。少し測定が面倒ですが、そんなに頻繁に計るものでもないなので、圧倒的に値段が安く、精度も十分な本品が良いと思います(ただし色で見極めるので色弱の人には向かないかも)。私は使ったことがありませんが安い酸度計は精度が低いみたいです。

保肥性は肥料成分を蓄えることで一気に肥料が放出されることによって引き起こされる肥焼けを防ぎ、肥料切れも起きにくくなります。保肥性を高めるには、基本用土として赤玉土を用いることが効果的です。赤玉土はマイナス電荷を持つため、多くはプラス電荷を持つ肥料成分を保持することができます。また、保肥性を高めるにはやっぱり団粒構造が重要です。団粒の中に肥料分が保持されます。団粒構造を作るためにも、微量栄養素を補給するためにも堆肥は重要になります。その他、バーミキュライトゼオライトも保肥性を高めることができます。

③ 土の生物性

生物性が良い土は多様な土壌生物が生息しています。これらの土壌生物は土の有機分を分解して腐食を作り出したり根に栄養を補給してくれたりします。 一方で植物に良くない影響をもたらす土壌生物も存在します。これらは連作障害(同じ土で同じ植物を育てることで生じる障害)を起こしたりします。多様な土壌生物はこれら有害な土壌生物が極端に増えることを防ぐため、連作障害を起こしにくくすることができます。ちなみに連作障害は連作や、土の殺菌でも防ぐことができます。

生物性を良くするには多様な土壌生物の源になる堆肥有機質肥料、そして土壌生物に様々な環境を提供することで多様な土壌生物を増やす団粒構造が重要です。

まとめ

以上が土作りで意識すべき基本的な点です。これらを意識しながら土作りをすることで何をいれたら良いのかが明確になると思います。団粒構造を作ることで物理性、化学性、生物性を高めてくれる堆肥の重要性もよく分かります。

以上で上げた要素の中でも特に気を使うべきなのは排水性(通気性)です。排水性が十分に確保されているかを確かめるため、植物を植える前に適当な鉢に土を入れ、灌水して水がちゃんと排水されるかどうか確かめると良いと思います(参考)。

次回は実際にひょうたん用の培養土を作っていきますよ~